睡眠の悩み
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群とは、眠っているとき一時的呼吸が止まってしまう病気です。これには、いびきが深く関係しています。
いびきは、睡眠中に舌やのどの筋肉がゆるみ、のどの空気の通り道を圧迫して起こります。これが重症化すると、のどが完全に塞がれ、無呼吸状態になってしまいます。一時的に窒息しているのです。
呼吸が無呼吸状態から正常に戻ったとき、心臓や血管に負荷を与えます。これが重症化すると、心臓や血管に多大な影響を及ぼすことになります。
近年の研究では、夜間の寝不足そのものがホルモンの感受性を低下させるなど体長を崩す原因となります。つまり睡眠時無呼吸症候群は、慢性的なストレスや不摂生が続いている状態だともいえます。
睡眠時無呼吸症候群は、心筋梗塞や脳卒中など生活習慣病をはじめ、うつ病といった心の病の引き金になります。生活習慣病やうつ病との合併症となる場合も少なくありません。
1時間当たりで30回の無呼吸を繰り返す重症者の場合、7~8年後には死亡率が20~30%もアップするとの研究報告もあります。
睡眠時無呼吸症候群の原因は?
しかし、肥満でなくても無呼吸状態になる方も多くいらっしゃいます。それは、いびきをかきやすい顔つきや骨格、のどの形をした方です。具体的には、下あごが小さな方や、歯の噛み合わせが悪い方、うりざね顔の方などによく見られる現象です。
男性は、若い方も多く発症しますが、女性は女性ホルモンの影響から、閉経以降の方が多く発症するのが特徴です。
また子どもの場合は、扁桃腺腫大やアテノイドといった症状が原因となる場合がほとんどです。
どんな人が来院・治療するの?
ただし、必ずしも「いびき=治療が必要」ということではありません。軽度の場合(いびきのうるささは別にして)、治療するまでもない場合もあります。
治療が必要とされるひとつの判断基準は、患者さまご本人の自覚症状です。
たとえば、睡眠は十分取っているのに、日中に眠気がする。疲れている。注意力が散漫になる。こういった慢性的な睡眠不足を自覚されているなら、治療の必要があるといえるでしょう。
しかし患者さまの中には、自覚症状のない方もいらっしゃいます。ところが重症の睡眠時無呼吸症候群を放置すると、心臓や血管に負荷を与え続けているので、高血圧や心筋梗塞などの恐ろしい病気の引き金となる危険性をはらんでいます。
結局、いびきや無呼吸状態が体にどれだけの負担をかけているか、実際に検査をしないとわかりません。
症状が疑われた場合は専門医を受診し、症状の軽重と治療の必要性を総合的に判断してもらいましょう。
どのような治療法があるか
専門医が患者さまそれぞれの症状から、最適な治療法をご提案いたします。
- CPAP治療(在宅持続陽圧呼吸療法)
睡眠時に鼻にマスクを当てて呼吸する、睡眠時無呼吸症候群の代表的な治療法です。1時間に無呼吸症状が20回以上認められる重症の患者さまに限り、保険が適用されます。 - マウスピース治療
軽症な患者さまのための治療法です。睡眠時にマウスピースを口中に装着し、下あごを前方に移動することで、無呼吸状態を回避します。 - 手術
扁桃腺やのどの形などの条件が適応した場合、手術による根治療法を行います。ただし、重症だから手術するというわけではありません。 - 生活指導
睡眠時無呼吸症候群の原因のひとつは、肥満です。肥満を改善するために栄養士が入り、生活指導(食事指導や栄養指導)を行います。当然、生活習慣病の防止にもつながります。
検査方法
どちらを選択するかは、患者さまの症状の程度から決定されますので、まずはご相談ください。
- 終夜睡眠ポリグラフ検査(入院)
ひと晩入院していただき、睡眠時の脳波と呼吸の状態を、8時間ポリグラフで検査・診断します。学会認定の検査技師が終夜遠隔で観察します。
睡眠時無呼吸症候群の確定診断となる、詳細な検査が可能です。
※終夜睡眠ポリグラフ検査は、医療法人SRA「たかおかクリニック」で対応しています。 - ポータブル検査(在宅)
カウンセリングから、明らかに睡眠時無呼吸症候群の症状が認められる場合、ポータブル検査器を持ち帰っていただき、患者さまご自身で検査していただく方法です。簡易的な検査方法なので、脳波は測定されません。
より詳細な検査・診断が必要な場合は、終夜睡眠ポリグラフ検査をお勧めする場合もあります。
ナルコレプシー
代表的な症状としては、笑ったり興奮したりしたときに体の力が抜けてしまう「情動脱力発作(カタプレキシ―)」があります。
他にも、入眠直後に幻覚を見る(入眠時幻覚)、金縛りにあう(睡眠麻痺)などもナルコレプシーの症状です。また眠った自覚がなく、後で自分の行動を覚えていないという症状もあります(自動症)。
若い人に多くみられますが、原因は不明です(遺伝子が原因という説もあります)。
専門的な知識がなくナルコレプシーと診断するのは、簡単なことではありません。最初は卒倒やてんかんと診断され、後にナルコレプシーとわかるケースもあります。
ナルコレプシーの検査・診断は、専門医が在籍し、入院可能な施設でしか行うことができません。睡眠学会の認定施設である「たかおかクリニック」には、他院から紹介を受けて来院される方も少なくありません。
検査・治療方法
ナルコレプシーの検査は反復睡眠潜時検査(MSLT)が基本です。
まず、ひと晩入院して終夜睡眠ポリグラフ検査を行い、睡眠時の脳波を確認します。
正常な睡眠では、眠ってから1時間半ほどでレム睡眠(夢を見ていて、全身の力が抜けているような状態)になります。
しかしナルコレプシーの症状では、入眠後、10分ほどでレム睡眠の状態になります。睡眠中ずっと夢を見ているような状態です。
翌日、日中での脳波のポリグラフ検査を行います。この昼夜の脳波の動きを検証し、ナルコレプシーの診断を下します。
※終夜睡眠ポリグラフ検査は、医療法人SRA「たかおかクリニック」で対応しています。
ナルコレプシーの治療は、薬物治療が中心となります。近年はより副作用の少ない薬が開発され、正しい治療により、コントロールすることができます。
また精神的な相談も、精神科医がサポートしますので、ご安心ください。
レム睡眠行動障害
軽い症状としては、寝言があります。症状がひどくなると、ベッドパートナーを殴ったり、起き上がって走り回ったり、階段を転げ落ちることもあります。自覚症状はほとんどありませんが、人によっては睡眠を取っても疲れが取れないと訴えるケースもあります。
寝ぼけている状態は、通常は寝入りばなに起こります(せん妄)。寝ぼけの状態は、脳波的にはまだ睡眠状態にはないので、レム睡眠行動障害とは根本的に異なります。
原因は不明ですが、まれに親子で発症するケースもあります。
検査・治療方法
レム睡眠時に体が動いていることが、レム睡眠行動障害の決め手になります。
ひと晩入院して終夜睡眠ポリグラフ検査を受診し、睡眠時の脳波を確認します。そのとき、ビデオ撮影も同時に行い、寝言や体の動きを検査します。
たとえ寝言を言わなくても、筋肉の緊張度はわかりますので、かなりの確率で診断が確定します。
※終夜睡眠ポリグラフ検査は、医療法人SRA「たかおかクリニック」で対応しています。
軽度の場合は必ずしも治療の必要はありません。しかし、寝言がうるさかったりベッドパートナーに危害を加えたりする可能性がある場合は、治療すべきでしょう。
治療方法としては、薬物治療が中心となります。正しい治療でコントロールできる病気です。
むずむず脚症候群
一般的な症状としては、足の一部分がムズムズして、夜に寝付けなくなり、不眠に悩まされます。ムズムズする部位は足先や足裏、ふくらはぎ、太ももなど、人によってさまざまです。
原因は不明で、高齢者が多数を占めています。また若い女性が発症する場合、鉄分不足との関係性が指摘されています。
ムズムズというより、人によっては足が火照る、あるいはチリチリするといった感じ方もあります。また痛いと感じた場合、神経痛と誤診される可能性もあります。
むずむず脚症候群は、足を動かしていると症状が収まります。まさに「レストレスレッグス(休めない足)」なのです。
検査・治療方法
むずむず脚症候群は、カウンセリングからある程度の診断が可能です。
確実な診断が必要とされる場合は、ひと晩入院して終夜睡眠ポリグラフ検査を受診することを推奨しています。足にも電極が取り付けるので、睡眠時に足が動き、睡眠が阻害されていることが証明されます。
治療方法としては、投薬治療が中心となります。近年、専門の新薬が開発され、治療効果が向上しています。
※終夜睡眠ポリグラフ検査は、医療法人SRA「たかおかクリニック」で対応しています。
お子さまのいびき、睡眠時無呼吸症候群
夜にぐずる、または熟睡できない。昼間、落ち着きがない・・・。そんなときは、睡眠時無呼吸症候群を疑いましょう。
お子さまのいびきや睡眠時無呼吸症候群は、扁桃腺の肥大や咽頭扁桃(アデノイド)などで、のどが圧迫されて起きるケースがほとんどです。
放置しておくと睡眠時に熟睡ができず、疲れが取れないために生活に支障をきたす恐れがあります。また成長期の睡眠障害は、心身のすこやかな成長を妨げる可能性もあります。
まずは、専門医による診察を受けましょう。
検査・治療方法
1歳以上のお子さまであれば、成人とまったく同じ検査をすることができます。
治療としては、扁桃腺を手術する根治療法がほとんどです。
3~5歳での発症が多く、それ以降は扁桃腺が小さくなり、改善される場合もあります。手術をするか、経過観察するかは、専門医による判断が必要です。